学生のアルバイトの定番といえば、デリヘルドライバーか喫茶店等の接客、販売業だろう。私はデリヘルドライバーの仕事が多く、どうも喫茶店は苦手だった。逆に友人のほとんどはデリヘルドライバーを嫌がった。どちらが、ということはないがその人の性格によるものだと思う。
定番の仕事は置いといて、ちょっと変わった仕事をしたことがある。
池袋風俗の客引きである。夜の8時頃から11時まで、たった一晩だけである。
池袋の西口公園(今は芸術劇場ができ雰囲気も変わったが、当時はあまり人の近づかないどんよりした公園だった)で新聞の拡張員みたいな感じのおじさんに声をかけられた。「金もちゃんと出すし、飯もおごってやるからちょっと仕事をかわってくれ」
仕事の内容は聞かなかったが、飯につられた。いざとなれば人通りも多いし逃げればいい。
池袋北口の方向に歩いていき、風俗最前線の場所にきた。回りでは店に連れ込もうとさかんに勧誘している。そこで、「おまえ、ここでおっさんの手を引いて、あの店に連れ込め」と店の場所を指差した。
格安のソープランドだ。
これはやばいと思ったが、ぶらぶらしているうちに時間になり飯にありつけるだろうと引き受けた。実際、道行く人に声をかける勇気はない。最初は周りの勧誘
員の行動を見ているだけだ。しかし、不思議なもので30分もすると、暇にもなるし、知らず知らずに声をかけ始めていた。人間おそらく誰しも順応性がある。
苦手と思ってもできてしまうものだ。当時、まだ19歳。若さへの安心感からか、あんがいと付いてきてくれるおじさんがいた。
結局、特別にということで1万円に飯代3千円をもらった。「また、こい」と言われたが丁重に断った。
しかし、このときのおじさんとはまた会うことになる。
その時もらった1万円は、その週の競馬七夕賞に賭け、18万円になった。勝馬は増沢騎手のコーセイである。